削りすぎない治療と、内部漂白をあまりお勧めしない理由
こんにちは。いそ歯科医院 院長の大川です。
鏡を見たときに、
- 「前歯が1本だけ黒く見える」
- 「昔治療した歯だけ、周りの歯と色が合っていない」
- 「写真を撮ると、その1本だけどうしても気になる」
こうしたお悩みは、実は多くの方から相談をいただきます。
ただ、「きれいにしたい」というお気持ちがあっても、
- どこまで歯を削られるのか
- セラミックにするしか方法がないのか
- ネットで紹介されている”内部漂白”はどうなのか
といった心配や疑問もあるかと思います。
今回は、前歯が1本だけ色の違う方に向けて、

- なぜその1本だけ色が変わるのか
- どんな治療の選択肢があるのか
- そして当院が内部漂白を基本的にお勧めしていない理由
についてお話しします。
1. なぜ前歯が「1本だけ」色が違って見えるのか
前歯が1本だけ黒っぽく見えたり、グレーがかって見えたりする主な原因は、次のようなものです。
- その歯だけ神経を取る治療(根管治療)を受けている
- 昔ぶつけた・転んだなど、外傷の影響で内部が変色している
- 古いメタルポスト(メタルコア)や差し歯の金属の色が透けている
- 以前入れたレジン(プラスチックの詰め物)が経年劣化で黄ばんでいる
特に多いのは、
神経を取った歯が、時間とともに少しずつ暗くなっていく
というパターンです。
神経を取ると、歯の内部の水分や栄養の流れが変わり、徐々に乾いたような、くすんだ色に変化していきます。
2. 治療の選択肢は1つではありません
前歯1本の変色に対して考えられる主な治療法は、大きく分けて次の3つです。
- 全体ホワイトニング + その歯の補綴治療(セラミックなど)
- 内部漂白(ウォーキングブリーチなど)で内側から白くする
- 小さな範囲でのレジン(プラスチック)修復で色を整える
このうち、当院では
- ① 全体のホワイトニングとセラミックやラミネートベニアの組み合わせ
- ③ 小さなレジン修復での微調整
を基本としており、② の内部漂白については、症例を慎重に選んで検討するという立場をとっています。
3. 内部漂白とはどんな治療? イメージだけが先行しがちです
内部漂白(ウォーキングブリーチなど)は、
- 歯の裏側から小さな穴を開ける
- 歯の内部に漂白剤(過酸化物)のペーストを入れる
- 数日〜数週間ごとに薬剤を交換しながら、内側から白くしていく
という方法です。
メリットとしてよく挙げられるのは、
- 歯の表面を大きく削らずに済む
- セラミッククラウンより歯質の削除量が少ない
という点です。
そのため、インターネット上では「歯を削らずに白くできる、優しい方法」として紹介されることもあります。
しかし、実際の臨床現場では注意すべき点も少なくありません。
4. 当院が内部漂白を”積極的にはお勧めしない”理由
(1) 神経を取った歯はもともと割れやすい
神経を取った歯(失活歯)は、もともとしなやかさが失われ、割れやすい状態になっています。
そこに内部漂白で使う薬剤(過酸化水素など)が加わると、
- 歯の表面の硬さが一時的に低下する可能性がある
- 長期的に見ると、破折リスクが高まる可能性も否定できない
と考えられています。
つまり、
もともと弱くなっている歯に、さらに化学的な負担をかける治療
という点は見過ごせません。
(2) 稀ですが、歯根の外側が溶けてしまう「外部吸収」の報告がある
内部漂白の合併症として、**歯頸部の「外部吸収」**というトラブルが知られています。
現在では危険性の高い方法は推奨されていませんが、
- 高濃度の薬剤を使用する
- 長期間・何度も繰り返す
といった条件が重なると、薬剤が歯の外側へ染み出し、根の一部が溶けてしまうケースが報告されています。
頻度としては高くありませんが、
「まったくリスクのない、安全な治療」というわけではない
ということを、歯科医師側も患者さん側も理解しておく必要があります。
(3) 期待通りの色にならないこともある
内部漂白である程度白くなっても、
- 周りの歯と完全に同じ色・透明感までは揃えにくい
- 時間とともに少し色が戻ってしまうケースもある
など、限界があります。
その結果、
「一度内部漂白をしたものの、最終的にセラミッククラウンに変更した」
という経過をたどることも珍しくありません。
その場合、
- 漂白で薬剤の影響を受けた歯を
- 改めて大きく削ってクラウンにする
ことになるため、結果的に歯への負担が大きくなってしまう可能性があります。
5. 当院がよくご提案する「削りすぎない」現実的なプラン
当院では、前歯1本の変色に対して、次のような流れで治療を考えることが多いです。
① まずは全体のバランスを見る
- 周りの歯の色
- 歯ぐきのライン
- 噛み合わせ
- その歯に残っている歯質の量
などを総合的に確認します。
② 全体ホワイトニングを軽めに行い、基準となる色を決める
- 周りの歯を一段階だけ明るくしておく
- そのうえで、問題の歯の色をどう合わせるか決める
ことで、**「1本だけ浮いた白さ」**を避けやすくなります。
③ 問題の歯の治療方法を選ぶ
歯の状態によって、
- ラミネートベニア(表側だけ薄く削ってセラミックを貼る)
- セラミッククラウン(すでに大きな被せ物や土台が入っている場合)
- 小さな範囲でのレジン修復(詰め物の変色だけの場合)
など、削除量をできるだけ抑えつつ、見た目と耐久性のバランスを取る方法を検討します。
6. セラミック = 「大きく削る」ではないよう工夫します
「セラミック」と聞くと、
「歯を大きく削って被せるもの」
というイメージが強いかもしれません。
もちろん、歯の状態によってはある程度の削除が必要なケースもありますが、当院では、
- できるだけ薄い形態で済むように設計する
- すでに大きく削られている場合は、その範囲内で収まるよう配慮する
など、**”削る量を最小限にする工夫”**を大切にしています。
7. まとめ:「削らない」だけが正解ではありません
前歯が1本だけ色が違う場合、
- 「できるだけ削りたくない」
- 「歯に優しい方法がいい」
というお気持ちは、とてもよく分かります。
ただ、
「削らない = 必ずしも歯にとって一番良い」とは限らない
のも現実です。
内部漂白は、条件が合えば選択肢の1つにはなりますが、
- もともと弱っている歯に薬剤の影響を与える
- 将来クラウンが必要になったときに、負担が上乗せされる可能性もある
という点を考えると、当院では「誰にでも積極的にお勧めする治療」ではないと考えています。
歯を守ること
見た目を整えること
将来の再治療のしやすさ
これらを総合的にバランスさせながら、その方に合った「最適な方法」を一緒に探していく——
そんなスタンスで治療のご相談をお受けしています。
ご相談をお考えの方へ
- 前歯が1本だけ黒くて、人前で笑うのが気になる
- セラミックにした方が良いのか、まだ決断できない
- 内部漂白が自分に合うかどうか、話だけ聞いてみたい
このようなお悩みがあれば、まずはお口の状態を拝見し、考えられる選択肢を整理するところから始めましょう。
その場で決めていただく必要はありません。
資料をお渡しし、ご自宅でゆっくり検討していただく形でも構いません。
「まずは相談だけ」でも歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。
当院では審美歯科の無料相談を行っております。是非ご利用ください!
いそ歯科医院 歯周病ホームページ https://www.isodent.
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