一部インプラント+義歯という現実的な選択肢
こんにちは。いそ歯科医院 院長の大川です。
テレビやネットを見ると、
- 「総インプラントで一気に噛めるように」
- 「入れ歯は全部やめて、上も下もインプラントに」
といった表現を目にすることが増えました。
もちろん、全体をインプラントにする治療がうまくいっているケースもあります。しかし実際の診療でお話を伺っていると、多くの方はこんな本音をお持ちです。
- 「正直、全部インプラントにする費用は厳しい」
- 「年齢や体のことを考えると、そこまで大がかりな治療は…」
- 「でも、今の入れ歯が外れやすい・噛みにくいのは何とかしたい」
そんなときに候補になるのが、
**「一部だけインプラントを使って、義歯を安定させる」**というハイブリッドな考え方です。
今回は、
- なぜ「全部インプラント」でなくてもよい場合があるのか
- 一部インプラント+義歯の仕組みとメリット・注意点
- いそ歯科医院での考え方
を、できるだけイメージしやすい形でお話ししたいと思います。
1. 「全部インプラじゃないとダメ」というわけではありません
歯を多く失ってしまった方の治療を考えるとき、選択肢としてはおおまかに次のようなものがあります。
- 部分入れ歯・総入れ歯のみで対応する
- 上下、あるいはいずれかを全てインプラントにする
- 少数のインプラント+義歯の組み合わせで対応する
インターネットや広告では、どうしても「総インプラント」のような大きな治療が目立ちます。しかし実際の臨床では、
「全部インプラントにしなくても、一部をインプラントにすることで義歯の安定がぐっと良くなる」
というケースが少なくありません。
以下のような点を考えると、**ハイブリッド型(インプラント+義歯)**が現実的なバランスになる方も多いのです。
- 費用面
- 手術の負担
- 治療期間
- 将来のやり直しのしやすさ
2. 「一部インプラント+義歯」とはどんな仕組み?
ここでは、イメージしやすいように下顎(下のアゴ)を例に説明します。
例:下の入れ歯がガタついて噛みにくい方
- 骨が痩せていて、下の総入れ歯がすぐ浮いてしまう
- 食事のたびに、入れ歯用の安定剤が手放せない
- 痛くて噛めないので、柔らかいものに偏りがち
こうした場合、
- 下顎に2〜4本程度のインプラントを埋入し、
- そのインプラントを”支え”として利用して、
- その上に**取り外し式の義歯(オーバーデンチャー)**を装着する
という方法があります。
インプラントに「パチッ」とはめ込むタイプや、バー状の連結部を使うタイプなど、構造にはいくつかバリエーションがあります。しかし、
「インプラントを柱にして、入れ歯をガッチリ支え、浮き上がりを防ぐ」
という考え方は共通です。
3. どんなメリットがあるのか?
「一部インプラント+義歯」には、次のようなメリットがあります。
① 総インプラントより費用負担を抑えやすい
使用するインプラントの本数が少なくて済むため、フルマウスのインプラント治療より費用を抑えやすい傾向があります。
② 入れ歯の「外れやすさ・ズレやすさ」が大きく改善しやすい
インプラントをストッパー・アンカーとして使うことで、噛んだときの浮き上がりやズレが減り、「ガタガタ感」が大きく改善することが期待できます。
③ 噛みやすさが向上しやすい
入れ歯だけのときと比べて、前歯でのかみ切りや、奥歯での咀嚼がしやすくなるという感想をいただくことも多い治療です。
④ 将来の変化にある程度対応しやすい
義歯部分は歯の本数や形の変更にも比較的対応しやすいため、残っている歯の状態が将来変わってしまった場合にも、「やり直し方」の余地を残しやすいという面があります。
4. 注意すべきポイント・限界もあります
もちろん、良いことばかりではありません。「一部インプラント+義歯」には、注意点や限界もあります。
① 入れ歯が「ゼロの違和感」になるわけではない
あくまで**「入れ歯を安定させるためのインプラント」**なので、完全な固定式のブリッジのように「何も入っていない感じ」とまではいきません。
「今よりかなり良くしたい」というニーズには合いますが、入れ歯の存在感ゼロを求める方には向かないこともあります。
② 定期的なメンテナンスは必須
インプラント部分はもちろん、義歯の清掃状態・歯ぐきの状態も含めて、定期検診・プロフェッショナルケアが欠かせません。
③ インプラントにかかる負担の設計が重要
噛む力が強い方、歯ぎしり・食いしばりがある方では、インプラントに過大な力が集中しないよう、以下の点を慎重に考える必要があります。
- インプラントの本数・位置
- 義歯の設計・金属フレームの有無
- 噛み合わせの調整
④ 骨の量や全身状態により、適応外になる場合も
以下のような場合には、インプラント埋入そのものが難しいこともあります。
- 骨吸収が極端に進んでいる場合
- 全身的なリスク(服用薬・基礎疾患など)が大きい場合
5. どんな方に向いているか?
あくまで一般論ですが、「一部インプラント+義歯」が候補に挙がりやすいのは、たとえば次のような方です。
- 総インプラント治療の費用負担が現実的でない
- 年齢・全身状態・通院回数を考えると、あまり大掛かりな手術は控えたい
- 今の入れ歯が「外れやすい・浮きやすい・ガタつく」のが主な悩み
- できればよく噛めるようにしたいが、完全固定式でなくても構わない
逆に、
- 「どうしても入れ歯は使いたくない」
- 「取り外しを一切したくない」
という方にとっては、他の選択肢(インプラントブリッジなど)を検討していくことになります。
6. いそ歯科医院での考え方
当院では、多くの歯を失ってしまったケースでいきなり
「全部インプラントにしましょう」
というお話をすることは基本的にありません。
代わりに、以下のような流れでお話を進めています。
- お口全体の状態(残っている歯・骨・歯ぐき)を把握
- 現在の入れ歯の良い点・困っている点を整理
- 「入れ歯のみ」「一部インプラント+義歯」「固定式インプラント」など複数の案を並べて、以下の点を一緒に比較
- 噛みやすさ
- 歯や骨への負担
- 費用
- 手術の規模・回数
- **「今どこまで治すか」と「将来どうなったら次のステップを考えるか」**を含めて、段階的な計画を立てる
「いきなり最終形まで完成させる」のではなく、今の年齢・体調・ご予算に合わせて”現実的な落としどころ”を探す
というイメージに近いかもしれません。
7. まとめ:インプラントは「全部かゼロか」ではありません
インプラントというと、「全部インプラントにするか、全くしないか」の二択のように感じてしまう方も多いのですが、実際にはその間にたくさんのグラデーションがあります。
その中の一つが、
「一部インプラント+義歯」というハイブリッドな選択肢
です。
- 入れ歯だけよりも、噛みやすく・外れにくく
- 総インプラントよりも、費用や手術の負担を抑えやすく
というバランスが取れる場合も多くあります。
- 今の入れ歯に不満はあるけれど、総インプラントには踏み切れない
- 将来のことを考えると、治療は慎重に決めたい
という方は、「一部インプラント+義歯」という選択肢についても、一度聞いてみていただければと思います。
いそ歯科医院では、インプラントの本数ありきではなく、
「その方にとって、歯と全身に無理の少ないバランスはどこか」
を一緒に探しながら、治療計画を立てていきます。
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